毛利悠介
shape of heart
(2022年時点)
CP | 10 |
NP | 15 |
A | 12 |
FC | 20 |
AC | 10 |
ゆーすけくんのイメージソングです(初期設定で音量が大きくなっている可能性がありますので注意してくださいね)
聴きながら読み進めていくもまた良し
毛利悠介さんのエピソード集です(読みたいタイトルをクリックしてください)
毛利が今の仕事に
進むことになったきっかけ
毛利悠介
(13歳当時)
毛利悠介が13歳になった誕生日、両親からノートパソコンをプレゼントされた。
悠介がねだったわけではない。
特別な才能を期待されていたからでもない。
それまでノートやら教科書やら広告の裏、下手をすれば部屋の壁にまで書き留めていた、落書きやアイディアや計算式や妄想の数々。
それらに両親が呆れ、『今後は全てここに記録するように』との苦肉の策だった。
パソコンはすこぶる便利で、悠介はすぐに夢中になった。
とりとめもなく湧き出てくるアイディアをどんどん打ち込んだ。
文書作成や表計算のスキルでは、あっという間に両親を追い越した。
しかし、マニュアルをろくに読まず、試行錯誤で動かしていたせいだろうか。
半年後にはパソコンの調子が悪くなり、フリーズを繰り返すようになった。
「俺が直してあげるよ」
優しく声をかけてくれたのは、パソコンに詳しい4つ上の兄だった。昔からよく面倒を見てくれていた。
しかし…兄に任せたところ、フリーズがおさまるどころかWindowsすら起動しなくなった。結果として壊れたのだ。
悠介は爆発的にキレた。家中に響き渡る声で泣き叫んだ。
「絶対、元通りにしろよ! 絶対、元通りにしろよ!」
その日から兄は、夜遅くまでマニュアル本とパソコンに向き合うことになった。バイトから疲れて帰ってきても、いつまでも直す努力を続けていた。
【許すものか!】
悠介の怒りが消えることはなかった。
大切なデータが、自分の全てが、あの中には入っていたのだ。
それら全てが失われることは、気が狂うほど耐えきれないことだった。
そして今日も、兄が目を真っ赤にして作業をしているのを横目で見た。
【まだ寝ないのか?】
【明日、早いよね?】
【くそー!このどうしようもないやり切れなさはなんなんだよ!】
ぶつけようのない怒り。
心の底から突き上げてくるのは、これまでとは違う衝動だった。
自分は一体どうすればいいのか!?
無力な自分に、一体何ができるのか!?
どんなに考えても分からなくて毎晩泣き続けた。
自分も兄もかわいそうで仕方なかった。
3日後。
悠介は、兄と一緒に様々な本を調べながら復旧を試みるようになった。
Safe モードはもちろんBIOS設定もいじくりまくった。メーカーに問い合わせてトラブルシューティングも試した。
パソコンに詳しくない両親は、ただただ祈ってくれていた。
最終的に、パソコンは業者に出したのだが復活することはなかった。
悠介の使い方が雑だったのに加え、兄の作業がトドメをさしたのだろう。
ハードディスクに致命的なダメージがあったとの報告を受けた。
これまでの全てが消えたのだ。2週間ほど魂が抜けたようになった。
両親も兄も新しいパソコンを買い与えようとしてくれたが、頑なに断った。
それで解決しないのは、アホな13歳にも分かっていた。
決してパソコンが嫌いになったわけではない。
本での勉強を続けたのは、もっとパソコンの仕組みを知りたかったからだ。
半年後。
悠介が手にしたのは、お年玉でパーツを買い集めた自作のパソコンだった。
そしてこの二代目(二台目)から、大人になった今でも、二重三重にデータのバックアップをとる、周りからはちょっと変人扱いされる慎重な習慣が始まったのだ。
あれから10年…。
悠介は、大人になった今でも、兄と一緒にお酒を飲むとからかうことがある。
「あの初代パソコンにはノーベル賞もののアイディアがいくつも詰まっていたのにー」と笑いながら。
相変わらず優しい兄も「もう勘弁してくれよ」と言いながら笑う。
ただ、悠介は感謝の気持ちも忘れてはいなかった。
酔っぱらって頭のハードディスクには残らないから、毎回、何度も同じセリフを言うことになるのだが。
「あの時はありがとう兄貴。パソコンに向かう兄貴の姿に心を打たれて、僕は今の仕事に導かれたんだ」と。
兄はいつも優しく微笑むだけだった。
だからいつもぼんやりと、大好きな兄の笑顔の記憶だけが、バグのように悠介の心に積み重ねられていった。
-f i n-
いいお話ですねぇ。私、涙が…
いいお兄さんがいて羨ましいシュー
人生の道を決める転機ですか。ある意味、羨ましい
完成!
当時の日記より
今日、ちょっと特殊なアプリが完成したよー。
パチパチパチー!
使い方次第で、多くの人の日常に、変化をもたらすことができると思う。
大げさに言えば、新技術とは、人間にとって「天国のカギ」にもなるし「地獄のカギ」にもなるということだね。
うーん、僕は皆が言うように変人だから、天国にも地獄にも行ってみたいなぁ。
原爆みたいに大それた技術じゃないから…。
皆? 大丈夫だよね?
-f i n-
やめとけーっ!
いったれーっ!
謝罪
当時の日記より
つい出来心でやってしまった。
酔っていたというのは言い訳に過ぎない。
なぜなんだ!?
納期がとうに過ぎたプログラムを、いまだに書けていないストレスがたまっていたのか?
それともアプリの不具合によるアフターケアに嫌気が差していたのか?
畜生! 誰でもよかったんだよ! まさに通り魔的な犯罪なんだ!
もちろん今は後悔している…。
被害者には、この命を懸けてでも謝罪したい。
この僕ともあろうものが、昨日の飲み会で、ニックフォールにディープキスしてしまうだなんて…
-f i n-
えっ?
納期過ぎてんなら来んなよ…
ポッ…(ニックフォールのモデルの人)
ポじゃねーし
天然? 計算?
ネッキャンミーティングに向かう神楽坂美咲は1人で電車に乗っていた。
降りる駅まではあと2つなのだが、声を出したい衝動と戦っていた。
視線の先にいるのは、若くて派手なカップル。
その2人が常識外れの大声で話しているのだ。
周りの乗客は眉をひそめ呆れている。
誰も注意しない代わりに、今や2人の周りには誰も座っていない。
美咲が逡巡している間に電車は駅に到着した。
あと1つ先だが、ここで降りて歩くのも手だった。
【ん?】
美咲の足を止めたのは、見たことのある顔が乗り込んできたからだった。
【えーっ!歩いても7分よ。たった1駅でも乗ってくるの? 毛利悠介ーっ】
毛利は美咲に気付かなかった。
そして迷うことなく空いている席、即ちカップルの隣に座った。
さらに…、
奇声を上げ始めた。
「あーあーあーあーっ!」
【何この状況は?!】
誰もが予測していない展開が始まった。
カップルは顔を見合わせながら席を立ち、周りの乗客は毛利から距離をとった。
電車がようやく降車駅に着いた。
いつもより遅く感じた2分間だった。
美咲は、平然とした顔で降りていった毛利の背中を追いかけた。
今なら声をかけられる。
「さっきの何だったの!?」
振り返り眉を挙げた毛利。
美咲が隣に並ぶのを待ってから口を開いた。
「お疲れさまっス。もしかして一緒の電車でしたか?」
「一緒だったけど、怖くて声掛けられなかったわよ。何なの、あの叫び声?」
「叫んだ? 記憶はないですけど…」
「叫んでいたわよ」
「うーん。確か隣のカップルが大声でアニメの最終回の話をしていたから、ネタばれ注意で、自分の耳に入ってこないようにアーアー声を出していました」
「ボリュームが怖いのよ。あのカップルもすぐに移動しちゃったじゃない」
「目も瞑っていたので気付かなかったっス」
「ん? でもそういうことか…。確かにあれで二人が、騒音が迷惑だということに気付いてくれればいいわね…」
「何が何をして何ですか?」
「本当にあなたは…」
後半のセリフは、あえて心にしまい込んだ。
【どこまでが計算なのかしらね…】
彼の頭は相当キレる。
多分、まだネッキャンメンバーでも気付いている人は少ない。
美咲は、鼻歌を口ずさみ始めた毛利の横顔をそっと見つめた。
変人のフリをして、計算ずくの言動をとることがあるのは、この短い付き合いでも把握しつつあったのだ。
-f i n-
たまたまじゃろー?
絶対たまたまよ
僕は神楽坂さんと同じ意見です
はい。毛利さんは凄い人なんです
意見が分かれていますが、変わった人なのは間違いなさそうですね
今も輝く登校時の思い出
当時の日記より
僕が郊外の高校に電車通学していた3年間、支線に乗り換える際の接続時間が0分という無謀なタスクがあった。
1番線に到着するのが7時52分。
3番線からの発車も7時52分。
その3番線の電車に乗れないと、次は1時間後となり、完全に遅刻となる。
まさにミッションインポッシブルなタスクだった。
毎朝、階段を全力で駆け上って3番線へと向かうのだが、メンバーはいつも同じ制服の、名前も学年も知らない5人だった。
そう、良識ある社会人は、そんな無謀なレースに参加しないのだ。
レースの準備は駅到着の1分前から始まる。
車両で言えば、前から2番目の左側の降車口。
そこが駅の階段に一番近いため、無言でソロソロと5人が集まる。
そして1分後。ドアーが開けば全員で猛ダッシュだ。
正直、ドアーが開いた瞬間は、皆、絶望的な気持ちになっていたはずだ。
何せ3番線の発車ベルが鳴り終わるのだから。
それでも毎日、毎月、毎年だ。
メンバーが卒業と入学で入れ替わり、男女の比率が変わっても、無謀なチャレンジは続いた。
必死で繰り返す内に、殆どの車掌さんは僕達が乗り込むまで待ってくれるようになっていた。
おそらくあの電車だけ、平日は7時52分15秒発だったに違いない。
早いものであれから7年が経った。
僕はすっかり社会人側の人間となり、たまに母校の制服を見かけても、何も感じなくなっていた。
そして今やあの電車は自動運転化された。
もうルールを破ってまで待ってくれる、粋な車掌さんはいないのだ。
それでも不思議なものだ。
今でも電車に乗ると、ふとあの戦友達の姿を探してしまうことがある。
たとえ隣にいたとしても、もう絶対に気付けないのに。
そして僕は時々、思い出してしまうのだ。
パソコンに囲まれ、機械に分単位でスケジュールを管理されて、息苦しくなるほど強烈に…。
あの熱くて汗臭い、息を切らしていた青春時代を。
-f i n-
ノスタルジーが次から次へと畳み掛けてきて、切なくなりますね。私としては、高校時代の毛利さんも見てみたかったですぅ
現実逃避もいいですけど、納期は守ってくださいねー。もういい大人なんですからワン