【皆のアイドル!?】NEX神足悠香エピソードvol.1

ダンス担当

神足悠香

shape of heart
(2022年時点)

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目次

神足悠香さんのエピソード集です(読みたいタイトルをクリックしてください)

Next Nex

登場人物

神足悠香
(幼少期)

神足悠香

神足悠香は、幼い頃から【兄には勝てない】と感じていた。

悪い意味ではない。
2つ上の兄、晃は、自分が生まれる前から優秀なのだから、自然なことだった。

「悠香ちゃんのお兄ちゃんってホント凄いねー」

周りからの称賛は、妹として誇らしくもあった。

神足悠香と兄。兄と妹

両親も、晃と比較することなく、悠香の意見を尊重してくれた。
劣等感など生まれるはずはなく、兄との関係も良好で尊敬もしていたのだった。

少なくとも7歳までは。

神足悠香

悠香の心に「さざ波」が起こり始めたのは、小学2年生になってからだった。

「悠香ちゃんの家って有名なんだねー」

父親が、誰もが知る大企業の2代目社長で、兄がその跡を継ぐべく英才教育を受けている事実。
それを知った時、自分の「負け」は必然だったのだと強く感じた。

【もし、私が年上だったら!?】

【もし、私が男に生まれていたら!?】

クラスメイトからの羨望の眼差しとは裏腹に、悠香には疑念が膨らんできた。

【跡継ぎでない自分など、最初から兄と比べられていない?】

【自分の意見が通ってきたのは、どうでもよい存在だったから?】

神足悠香

元々が、負けず嫌いな性格だ。

両親や兄を嫌いになることはなかったが、少しはギャフンと言わせたくなってきた。
勝手に決められた運命に負けたくなかった。

そこから悠香は、兄に勝るものを必死で探し始めた。

【何か一つでもいいから!】

学校

運動、勉強、礼儀作法、人付き合い、乗馬、ヴァイオリン。

晃と対決できる全てにおいて、何をどうがんばっても勝てなかった。

ムキになる悠香へ母親は「2つも歳の差があるのですから仕方ありませんよ…」と慰めた。

しかし、悠香が比べていたのは、常に同じ年齢だった時の晃だった。

しつこいくらい、先生やコーチや師範に尋ねていった。鼻息荒く。

「お兄ちゃんが私くらいの時はどうだった?!」

結果は聞くまでもない。

晃は、生まれ落ちた次の瞬間から、厳しいエリート教育を施されているのだ。
両親に甘やかされ、自分の好きなことしかやってこなかった悠香に勝てる余地はなかった。

神足悠香

悠香が小学4年生になった初夏のことだった。

乗馬教室の帰り道、お腹が空いたということで、晃とコンビニに寄った。

珍しくコーチに褒められて、機嫌が良かったからだろうか。
入店時に流れた音を何気なく「ファレラレミラー♪ミファミラレー♪」と繰り返した。

「何それ?!」

隣にいた晃が目を丸くして尋ねた。

「ん?今流れたから…」

神足悠香

「そうじゃなくて、ユウは何の音か分かるの?」

「え? 分かるでしょ? いつもドレミの音で聞こえてない? 救急車の音とかも」

ゴクリと喉を鳴らせてから晃が尋ねた。
「…救急車って、何て言ってるの?」

「シーソーシーソーじゃん」

神足悠香

「凄っ…」

悠香は、この時の晃の表情を決して忘れることはないだろう。
後にも先にもこの1度だけだった。
まるで神にひれ伏すかのような畏敬の念を、その眉と目と口で表したのだった。

ネットキャンバス

「絶対音感」

音名を瞬時に正確に判別できる能力のことで、人口の1%未満しか持っていないと言われている。

そして誰も気付けていなかったが、悠香には生まれつき、絶対音感が備わっていた。

悠香自身、晃に指摘された時には驚いた。
皆、普通に音の高さを聞き分けられるものだと思っていたからだ。

音名とは、いわゆる「ドレミファソラシド」となる。

つまり悠香は、日常生活で入ってくる音が全て「ドレミファソラシド」のいずれかの音階で聞こえていたのだ。

神足悠香

どんな能力にもメリットとデメリットは存在する。

絶対音感のメリットは、当然ながら音楽関連に有利な点だ。
音楽の成績は常に良かったし、練習しなくても歌やピアノを上手にこなせた。

デメリットは…、おそらく一般の人にとっては想像もつかない点となる。

雑音ですら音名に変換してしまう煩わしさはまだしも、音名と違う言葉が耳に入ってくることで、脳が強いストレスを受けるのだ。

具体的には、「ド」という言葉なら「ド」の音階であってほしかった。
「レ」と発しているのに「レ」の音階でない時に、その違和感に耐えられなくなるのだった。

神足悠香

例えば、有名なドーナツ屋さんのCMソング。

「〇スター〇ーナツ♪」

【これ、音名で言うと、正確には、レスターミーナツ♪、だからーっ!】

最悪なのは、ドレミの歌だった。

音階の歌のクセに、最後の裏切りが非道すぎる。

「ドーはドーナツーのドー♪」

【これ、最後はドじゃなくてミになっているからーっ!】

「レーはレモンのレー♪」

【これ、最後はレじゃなくてファだからーっ!】

悠香の絶叫は、延々と続くこととなる。

ムンクの叫び

いずれにせよ、初めて兄に勝てるものを見つけられた悠香。

見つけた翌日には、早速、晃をカラオケに誘い、満点を取って完勝した。
何度、挑戦されても完勝した。

晃は「凄い才能だよ。今すぐ新藤さんの事務所に入って歌手を目指そうよ!」と嬉しそうに笑った。

悠香自身、自分がやっていく道はこれだと確信し、母親に頼み込んでボイストレーニングとダンス教室に通わせてもらうことになった。

好きで得意分野の習い事だ。
週1回が週2回に、そして週3回と、どんどんノメり込んでいった。

中学生になった頃には、トレーナーから絶賛される回数も増えたが、自分のレベルがどれくらいなのかは分からなかった。

他人と競争するためにやっているわけではなかったし、歌もダンスも個人レッスンだったのだ。
一緒にやっている仲間がいないので、比べる対象がなかった。

神足悠香。ボイストレーニング

悠香が高校2年生になったタイミングで、晃はアメリカの大学に進んだ。

「ちょっとMBA(Master of Business Administration)を取ってくるよ」

軽い口調で晃は笑ったが、悠香に無理なレベルであることは、自分が一番よく分かっていた。

跡継ぎとしての晃のステップアップは順調で、家族は何も心配していなかった。

だからこそ両親は、悠香には無関心で、何でも好きなことをさせてくれたのだ。

ネットキャンバス

「俺が帰ってくる頃には、ユウは歌手になっているのかな?」

「はぁ? なれるわけないでしょ。リリーちゃんじゃあるまいし。普通に大学生じゃない? まぁ本気出してMOSくらいは取っているかもね」

「おーMOSか、懐かしい。オレ、中学の時に取ったようなw」

「うるさい! とっととアメリカ行け!」

「おぅ。悪いけど、父さんと母さんをよろしく頼むな」

おそらくこの会話の後からだった。

悠香が自分の将来を少しずつ考えるようになったのは。

神足悠香

【兄が帰ってくる時、私は何者になっているのだろう?】

何度も自分に問いかけたが、答えは出なかった。

会社の業績は堅調で次期社長も優秀。
神足家自体も、2代先まで遊んで暮らせるだけの資産を持っている。

いい意味でも悪い意味でも、悠香にはやるべきことがなかった。
がんばる必要がなかった。

ゲームで言えば、もうゴールしているので、正直、ここからの余生が退屈なのだ。

学校での進路相談も、先生とお互いやる気を感じられない会話が交わされる。

「まぁ神足さんなら、どうにでもなるわね…」

毎回、それが結論になった。

進路相談。神足悠香

悠香が高3の夏休み。

推しの「アセンブルワールド」が出ているライブハウスに行った時のことだった。

インフォメーションコーナーに「地下プロデューサーX氏、仮面アイドルグループNexを結成か!?」とのニュースが貼り出されていることに気付いた。

【仮面アイドルグループって?!】

突っ込まざるを得なかった。

その一方で、顔出ししないアイドルに興味も湧き、携帯をかざしてQRコードを読み込んだ。

これが運命の分岐点であることには、まだ気付いていなかった。

「Nex」

携帯をスクロールしていた悠香の手が止まった。

「第一次オーディション。挑戦者受付中!」

「自分の才能を生かすチャンスだ!その限りない才能を見せつけよう」

心が少しずつ湧きたっていくのを感じていた。
まるで自分のために用意されたイベントではないか?

ゲームで言うなら、全く新しいゲームをゼロから始められる予感だった。

神足悠香

悠香は、ページを眺めながらも様々な計算を始めていた。

オーディションを受ければ、自分の歌とダンスのレベルを知ることができる
 ◎

ずっと1人きりだったので、仲間と一緒にパフォーマンスをしてみたい
 

デビューしたとしても、仮面をつけているので、家族に迷惑をかけずに済む
 

仮面アイドル

しかし…、さすがにボタンを押して先に進むのはためらう。

生半可な才能で目指せる世界ではないし、好きだけでやれる仕事でもないし、独断で決めていいとも思えない。

【一度、冷静になろう…】

そっとページを閉じようとした直後、兄、晃の声が頭の中に鳴り響いた。

「俺が帰ってくる頃には、ユウは歌手になっているかな?」

1年前は、からかわれているのだと思っていた。
しかし、今思い返すと明らかに響きが違う。

もっと優しく、諭すような声だったのだ。

ネットキャンバス

「ユウの絶対音感を、うまく活かせよ…」

今更ながら、そういう意味だったのだと悟った。


そして何で忘れていたのだろう?

【私にはこの道しかない!】
小学4年生の初夏に誓ったはずだ。

悠香は人差し指を再び動かした。
兄が背中を押してくれている。

もう迷いはしない。
力強く「挑戦する」ボタンを押した。

-f i n-

佐々木拓海

悠香ちゃんの家ってそんなに凄かったんだ。なのに何で僕の隣でバイトしてんの? ハッ、まさか僕のこと…。いや、ダメダメ、僕には夢菜ちゃんがーっ!

伊藤明日香

よくできた兄と自由奔放な妹か。世の中には色々な兄妹の形があるものだ

毛利悠介

Nexほど個人を見分けられないグループってないよね。どれが悠香なのか全く分からないよ!


2021年9月3日

富士サスケとの出会い

登場人物

神足悠香

神足悠香

神足悠香が、新生アイドルグループ「ネックス」の二次審査を受けている最中のことだった。

プロデューサーであるX氏が困惑した表情を浮かべながら尋ねているのは、悠香の反応が弱すぎるからだった。

「では次に、志望動機を教えてください」

悠香は尋問でも受けているかのように硬い表情のまま答えた。

「自信があるのが音楽だけだったからです」

神足悠香

「音楽も様々な道があると思いますが、あえてウチのオーディションを選んだ理由は何ですか?」

「仮面アイドルという点に惹かれました。純粋に歌とダンスで勝負できる気もしますし」

その時、X氏の隣に座っていた富士サスケが右手を挙げながら質問した。

「実際、歌とダンスのレベルは高いと感じたけど、どこでレッスン受けてるの?」

「湯島さゆみ先生のところです」

「いい先生についているなぁ。俺も昔世話になったことがある。あの先生、湯島なのに千駄木に住んでんだよなーw」

富士サスケ

この時だけは悠香の表情が少し和らいだが、X氏が話を戻すように再び口を開いた。

「それ以外に、あなたのセールスポイントを教えてください。例えば、あなたを売り出すキャッチフレーズを作るとしたら、どんな言葉がいいですか?」

悠香は完全に固まってしまった。

質問の内容は理解できたが、自己PRについては一度も考えたこともなかったので、言葉が出てこなかった。

沈黙が室内を支配したのは3分くらいだろうか。

サスケがたまりかねたように助け船を出した。

「アイドルは自分のストロングポイントを知っとくことも大切だからな。とりあえず何でもいいから言ってみなよ」

「私は…」

言葉はそこまでだった。

どれだけ待っても悠香の口からそれ以上の単語が出ることは無かった。

神足悠香

2時間後。

「お、神足…」

オーディションの帰り道、悠香は富士サスケと偶然、出くわした。

「あ、先ほどはどうも…」

ネットキャンバス

「うんにゃ、ドンマイドンマイ。ちなみにX先生はもちろんだけど、俺のことも知っていた?」

悠香は頷いた。

「歌を一度聞いたことがあります。半年くらい前、アセンブルワールドのライブを見に行った時、確か前座で歌ってましたよね?」

「前座じゃねーよ。たまたまアイツらが俺達の直後に歌っていただけだよ」

「あはっ」

悠香の表情からスーッと警戒心が消えた。

「負けず嫌いなんですね。あとバンド名「さすけ」って富士さんの名前からですか?」

神足悠香

「あぁ。ところでお前、結果はまだ分からないけど、もし受かったら事務所はどこにするつもり?」

「業界には詳しくないので、マーズファクトリーにしようと考えていました」

サスケが大きく顔をしかめた。

「マ、マーズ!? これだから素人は困るぜ。お前なんかが入れるわけねーだろ!」

「えっ?」

「この世界をナメんなよ。あそこは超一流しか入れない事務所なんだぜ。もし入れたら何でも言うこと聞いてやるよ!」

富士サスケ

「それはありがとうございます。私、何かあったら入れてくれるって聞いているんで…」

「は? 誰にだよ?!」

「リリーちゃん」

「…って、新藤リリー?」

「はい」

サスケの両眉が見る見る垂れ下がっていく。

「あのー、あなた様は新藤さんとどのようなご関係で?」

「昔からの知り合いです。私はお姉ちゃんって呼んでいます。あ、もちろん今の社長も知っています。昔、リリーちゃんのマネージャーさんだった人だから」

「ふーっ」

富士サスケ

サスケは自分を落ち着かせるかのよう、大きなため息をついた。

「あのなぁ…。やっぱ素人は困るわ…。お前、今日オーディション受ける必要なかったぞ。帰れ帰れ!」

「いえ、もう帰ってますけど、どういうことですか?」

「マーズに入れば、もっとちゃんと売り出してくれるわ。こんな地下アイドルなんて裏道使わず、確実にな!」

機関銃のように話していた2人だが、ここで少しだけ間が空いた。

神足悠香

「私…、顔出しNGなんで」

「ふーん。色々、わけありなんだな。お前の正体に俄然、興味が湧いてきたわ」

「普通の女子高生ですけど…」

「あん? お前、キャピキャピもぶりっ子もできないだろ?」

悠香は悔しそうに黙りこくった。

「だよな。今日のオーディション、お前だけ笑顔も媚びもアイドルらしさも無かったから江楠(えくす)先生も不思議がっていたぞ」

「あ、X先生って、ある意味、本名だったんですね」

「あまり人には言うなよ」

ネットキャンバス

「はい。ところで、何でも言うこと聞いてくれるらしいんで、どこかいいバイト先、紹介して下さい」

「バイト?」

「私、バイト続かないんです」

「ふーん。根性はありそうなのにな…」

「まぁ人間関係が苦手というか…」

悠香はそう言いながらも、サスケとの会話が弾んでいることがとても不思議だった。

「お前って、色々と致命的な奴だな」

なるほど。少し分かった気がする。

裏表なくズカズカと話してくれる人間の方が、自分は楽なのかもしれない。

ネットキャンバス

悠香の思いに関係なく、サスケは不愛想に質問してきた。

「っとなると…お前、料理は作れるか?」

「まぁ人並みには」

「手先は器用?」

「人並みには」

「そうか。なら俺がバイトしていたお弁当屋さんを紹介してもいいぞ」

「お弁当屋さん!?何か楽しそう!」

bサイン

「やっぱりお前って浮世離れしているなぁ。言っておくけど、ここで続かないならどこ行っても無理だぞ。何せ店長が仏さまクラスの優しさだからな」

「仏さま…ですか」

「ん? 待てよ…」

サスケが何かを考え始めた。

「仏って漢字、フランスって意味だよな…。うん、こりゃー上手くできてるな…」

斎藤千歳

悠香が呆れたように言った。

「何ブツブツ言ってるんですか?」

サスケがいきなり笑い転げた。

「お、お前、フツフツ(仏仏)ってー!?w 超受けるんですけどーw」

「はぁ?言ってないけどー?! うざっ!」

ネットキャンバス

こうして悠香は、初日にしてサスケにタメ口をきくようになり、その後、2度と敬語を使うことは無かった。

そして、裏読みもせず本音で話せる大切な人間は、兄、新藤リリーに次いで、3人目となった。

-f i n-

長谷川光

なるほど。アメリカに行ってるお兄さんの代理みたいな存在なのね

津雲大輔

こっちは出来の悪い兄貴だなぁ!


ネットキャンバスに入会しました

2022年6月8日

当時の日記より


まだ詳しくは分かっていないけど、店長に誘われてネットキャンバスというサークルに入会する流れとなった。

果たしてどんな人達が集まってくるのかしら?

斎藤千歳 ネットキャンバス

本音での交流を目指すらしいけど、仮に人生の大半が反省や後悔だらけという人がくるならば、一緒にいても重苦しい気分になりそうで、友達になれそうな気がしないかな。

逆に、一度も後悔したことがないという明るい人が来たならば、鼻もちならなくて友達になりたいとすら思わないわね。

もちろん向こうにも選ぶ権利はあるけどね。

神足ゆうか ネットキャンバス

うん。果たして私はどんなふうに思われるかな?

初顔合わせが楽しみだわw

まさか同年代の子もいるわよね?

-f i n-

佐々木拓海

いるよーっ!

星野彩美

いるよーっ!

出雲美紀

い、い…(ムリムリ、私は言えません…)



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