神楽坂美咲
shape of heart
(2022年時点)
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NP | 12 |
A | 20 |
FC | 10 |
AC | 14 |
神楽坂さんのイメージソングです(初期設定で音量が大きくなっている可能性がありますので注意してくださいね)
聴きながら読むと、臨場感が増すぷぅ~
神楽坂美咲さんのエピソード集です(読みたいタイトルをクリックしてください)
終わりと始まりの日
神楽坂美咲
(13歳当時)
祖父である神楽坂玄明が、自宅の書斎で倒れたのは、2009年8月1日のことだった。
緊急搬送されたのは、都内でも有数の特定機能病院。
しかし、わずか2日後には、再び書斎に玄明の姿を見ることになる。
玄明が周囲の反対を押し切って強引に退院したからだった。
同日、玄明の自宅に1人呼び出された美咲。通されたのも、やはり書斎だった。
玄明は、すでに仕事を再開していたのだ。
『10年後の農業のあり方』というタイトルでの執筆。
緊急の仕事でないのは、中学2年生だった美咲にも分かった。
しかし玄明は、美咲が到着するなり時間を惜しむように、いつもの指導を始めた。
「美咲、死に方は生き方より大事だ。生き方はやり直すこともできるが、死ねるチャンスは1回しかない」
「はい」
「これがワシにできる最後の指導となるだろう。ワシのこれからをよく見ておくといい」
「でも無理をしては元も子もないと思います…」
「おぅ、お前が意見を…。そうか、もうそんな年齢になったのか…」
玄明の頬が収縮したのを初めて見た。
…が、それを微笑みだとは思わなかった。
すぐにいつもの厳しい表情に戻っていたせいもあるし、そもそも祖父の笑顔など見たことがないのだ。
「医者も周りも『そんな無理をして死んだらどうする?』と言ってきたわ。しかしお前はワシのこれまでの教えを信じろ。そんなこと考える奴には何もできんのだ。美咲、お前はこれからも『死んで悔いなし』と思って物事に取り組むのだぞ」
「はい…」
返事はしたものの、中学生の心には響かなかった。
【なぜおじいさまは、今回も弟は呼ばず、私にばかり教えを説くのだろう?】
ぼんやりそんなことを考えていた。
それから2週間が経った8月15日の明け方。
仕事をやり遂げた書斎で、息を引き取ったばかりの玄明が発見された。
まず間違いない。自らの死の日時までをも正確に予測していたのだろう。
祖父にとっては計算通りでも、美咲にとっては、衝撃以外の何物でもなかった。
尊大な祖父にしては呆気なさ過ぎる。
あれだけの人間が本当に亡くなってしまうことが信じられなかった。
ただ一方で、大きな流れが形を変え始めたのも敏感に感じ取っていた。
これまで美咲はずっと分からなかった。
表面上はともかく、本質的には何一つ理解していなかったのだ。
なぜ自分は他の友達と異なる環境にいるのか。
なぜ子供らしくないと陰口を叩かれてしまうのか。
なぜ未来を予測する必要があるのか。
なぜ皆のように、おじいちゃんと無邪気に笑い合えないのか。
そんな自分の中にある疑問の薄皮が、1枚ずつ剥がれ、答えが何となく見えてきそうな予感があった。
ー2日後ー
葬儀には、全国から集まってきた親戚の顔々があった。
その一部から、ひそひそ話がこぼれてきた。
「あの泣き虫の美咲さんが泣かないのですね」
「あぁ、玄明さんの厳しい教育に散々泣かされてきたからね。元々、表情がない子だったし、心がマヒしちゃったんじゃないかな」
美咲の耳に声は届かなかった。
頭の中には、これまで祖父から受けてきた指導の数々が、溢れだす走馬灯のように流れていたのだった。
これまでピンと来なかった教えが、クリアーになってきたのはなぜだろう?
厳しかったとはいえ、美咲にとっては初めて経験する肉親の死だった。
悲しくて寂しくて仕方ないのに、今度は、ある一つの教えがずっと頭の中から離れなくなってしまった。
それは3年前。愛犬のチロが死んで泣き続けた自分に対する、祖父の言葉だった。
『美咲、何でそんなに泣いている。チロにありがとうと言ったか? それだけを繰り返せばいい。死んだものに対する最高の別れ方は、悲しみに浸ることよりも感謝だぞ』
そうだ。
確かにそれは、3年前にはよく分からなくて、あまりに悲しすぎて、実践できないことだったのだ…。
美咲は自分が唇を強く嚙み締めたのを感じた。
自分の中にある何かが急速に変わり始めていく怖さと戦っていた。
親戚達の声が大きくなった。
しかし美咲は、会場に広がるザワつきにも気付いていなかった。
「おい、美咲ちゃん今、顔を上げて、口を動かして…」
「それよりちょっと今、微笑んでいなかったか?」
「あの美咲さんが、あんな顔をするなんて…」
「今、玄明さんに向かって何を伝えたんだ?」
セレモニーホールには、優しい「Let It Be」が繰り返し流れていた。
そして…。
1つの奇跡が訪れた。
抑えきれない嗚咽を機に美咲が勢いよく号泣し始めた。
幼い子供のように、人目をはばからずワンワンと。
溢れ出る涙を抑えきれない美咲の隣には、心配そうに見つめる弟の姿があった。
何という天からの贈り物だろう!
ずーーっと忘れていた遠い昔の光景が、奇跡のようによみがえったのだ!
ずーっと幼い頃、一緒に遊んでくれていた、「玄じいちゃん」の笑顔の記憶が。
-f i n-
これはヤバい。涙腺が崩壊してしまう…
美咲さんのルーツが少し分かった気がします…
いつだって肉親の死を受け入れるには、時間がかかるものです…
「LINO」を退職した時の挨拶
退職の最後に、何か私に聞いておきたいことはある?
最近、上手くいかないことが増えてきて、本当に自分が成長できているのか不安になってしまうのですが、どうすればいいでしょうか?
あぁ、よく分かるわよ。私も若い頃、そのスランプが壁だと思っていたもの。で、それを必死で乗り越えたらまた次の壁が立ちはだかっていて…
そうなんです。ずーっとその繰り返しなので、時々しんどくなるんです
あなたは真面目だからね。ずっと前だけ向いてがんばってきたのね
…
それってやりがいはあるけど、やっぱりキツい時もあるわよね
はぃ…
だからね、美咲。たまには後ろを振り返ってみなさい。あなたが壁だと感じていた一つ一つを振り返ってみなさい
後ろを…
そう。後ろを見れば、壁じゃなくて階段だったことに気付くから。あなたはそれらの階段を登ってきて、今ここに立っているのよ
壁ではなく階段だったんですか…
そうよ。だからあなたはちゃんと成長してきているの。その証拠に、以前と全く同じ壁にはぶつかっていないでしょ? 新しい別の壁が次々と襲い掛かってくる感じでしょ?
はい
ねっ。だからあなたは時々、自分の足跡を誉めてあげなさい。そして横も見て色々な人と交流をして自分にはない視点と情報を仕入れるといいわ
横も見て、人との交流ですか…
そう。今のあなたにはそれが一番必要かもね。じゃあとりあえず日本に戻りなさい。退職金は3日以内に振り込んでおくから
色々とお世話になりました。ここでの経験を私は忘れません
こちらこそ2年間ありがとう。これからの美咲に期待しているわ
-f i n-
以前は社長と社員の関係だったんですね
でもネッキャンに入れば対等ですからねっ!
そうそう、恨みを晴らせばいいんスよ!
あんた達、話聞いてた!?
WEBサークル「ネットキャンバス」が作られたきっかけ
「あ、地震…」
神楽坂美咲が小さく呟いた数秒後、実際にBサインのイートインスペースが揺れ始めた。
「おーホントだw」
同じテーブルで話をしていた星野彩美が小さく笑った。
「相変わらず美咲は、先が見える女じゃのぅ」
「鍛えてきた分、多少はね」
揺れはすぐに収まったので、周りでは気付いていない人の方が多かった。
それでも美咲は周りを見渡しながら口を動かした。
「でもここで色々な人とお喋りすることで、見えなかったものが見えてくることもあるのよ」
彩美もそれには賛同した。
「確かに雑談で終わらせるには勿体ない話もあるわね。新しく気付いたことも…」
「そう!」
美咲が大きく頷いた。
「だからただの雑談で終わらせたくないの。ちゃんと交流する場を設けて、皆で色々な情報をシェアしていきたいのよ!」
彩美は少し目を見開いた。
「あぁ、それがさっきの仲間集めの話につながるわけね。でもそれってサークルみたいな感じにするの?」
「うーん…えっ?サークル?」
自信無さげな小さい声だった。
「ちなみに美咲は大学時代、サークルには入っとったん?」
「いいえ、日本文化研究室というお堅いゼミよ。彩美はサークルに詳しい?」
「わしゃーお笑い研究会で…。実はちょっとだけサークルには憧れていたんじゃー!」
「じゃあ2人ともよく分かってないけど…、作っちゃおうか!?」
次第に2人の声のボリュームが大きくなってきた。
「いいのぅいいのぅ、全く分かってないけど、まずは千歳ちゃんを誘おう!」
「そうね。美紀ちゃんもいいし、以前お世話になった社長も外せないわね…あ、また地震が…」
すかさず彩美がチョロっと舌を出した。
「スマン。これは興奮してきた私の貧乏ゆすりじゃー!」
-f i n-
なるほど。こんな感じでネッキャンは始まったのですね
私は次の日に声をかけて頂きました
今となると、ちょっと懐かしいですね