【いくら何でも彼女の数、多すぎやろ!?】巻誠エピソードvol.1

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恋愛全般担当

巻誠

shape of heart
(2022年時点)

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L&P

巻誠さんのイメージソングです(初期設定で音量が大きくなっている可能性があるので注意してくださいね)

フィーネ

聴きながら読むと、より誠さんを理解できるかも…

目次

巻誠さんのエピソード集です(読みたいタイトルをクリックしてください)

1998年8月4日

最低評価からのスタート

巻誠
(幼少期)

幼稚園児。巻誠

「LOVE&PEACE」

これが巻誠という人間を表すのに最適な言葉となる。

誠は、小さい頃から「愛と平和」を実践する優しい子だった。

あまりに優しく、戦うことを嫌ったため、KAGURAZAKA商事の後継者争いからは、真っ先に脱落したほどだった。

巻誠

誠が幼稚園の年長クラスの時だった。

母親が、深い意味もなく尋ねた。

「幼稚園で好きな女の子はいるの?」

「うん!春ちゃん好き、なっちゃん好き、サトちゃんも好きだしユイちゃんも好き!」

「あらら、好きなコだらけね。苦手なコはいないの?」

「うーん、しいちゃんはちょっといじわるするから苦手だけど、嫌いじゃないよ」

「それは楽しそうで何よりだわ。このまま皆と仲良くなさいね」

「うん!」

そう…。母親の言う通り、皆と仲良く生きられれば、どれほど幸せだっただろうか。

幼稚園児。巻誠

誠が小学2年生になったある日、衝撃は突然訪れた。

クラスメイトの諸菱由衣から「香菜とはもう話をしないで。私とだけ喋って」と言われたのだった。

最初は冗談かと思い、軽く対応していたが、泣き出してしまった由衣を見て誠は考え込んだ。

あれほど優しい由衣が言うセリフとは思えない。

一体、何があったのだろう。

自分一人では埒が明かなかったので、帰宅後、母親に相談した。

巻誠と母親

「由衣ちゃんの言っている意味が分からないんだ」

「由衣ちゃんは誠と付き合いたかったのね。好きな人を独り占めしたい。それも自然な感情だと思うわ」

「付き合うって何?」

「1人のお相手と誠心誠意、向き合うことよ」

「1人…。皆を好きじゃいけないの?」

「まぁ付き合うくらいならば、他に好きな人がいてもいいかもしれないけど…。いざ結婚ってなったらそうはいかないわよ。1人に絞らないと」

「バイキングなら1種類しか食べちゃいけないってこと? 結婚ってそういうお約束なの?」

「バイキングはどれをとっても誰にも迷惑かけないでしょ? 結婚してまで色々なコに手を出したら、周りがメチャクチャになっちゃうのよ」

「じゃあ誰にも迷惑かけず、周りもきちんとすれば大丈夫だよね?」

「いいえ。日本には、一夫一妻という法律で決められた制度があるからダメなの」

「そう…」

「あら、どうしたの誠? そんなに暗い顔をして」

「僕、結婚できないかも…。誰か1人だけを選ぶなんてできないよ…」

「うふふ、大丈夫よ、安心して。誠も大人になったら自然と変わるから」

2006年5月20日

誠は中学生になった。

相変わらず好きな女子はいるのだが、誰とも付き合うことはできなかった。
残念ながら母親の予測は外れ、誠の中身は何も変わらなかったためだ。

1人に絞れない。そして皆を同じくらい好き。

さすがに誠は、自分がおかしいのだと思った。

巻誠

昔は、皆が複数のコを好きと言っていた。しかし未だにそんなことを言っているのは、自分一人なのだ。

自分が皆と違うのは、脳に異常があるためだと考えた。

あれほど相思相愛だった諸菱由衣も、今や自分の許を離れてしまったのだ。

母親に頼み込んで、色々な病院を訪ねた。

「いやー若いっていいねー」

殆どが一笑に付された。

中にはMRIで画像を取ってくれる先生もいたが、最終的には「異常なし」と結論付けられた。

誠は、絶望感からうつ状態になり、脳外科から心療内科へと診療科が変更された。

病院の診察室

新しく担当になった医師、佐島健は、まだ若かったが非常に熱意のある先生だった。
誠の話も親身になってよく聞いてくれた。

そして今日は、これまでの心理テストとカウンセリングの結果が示される日だった。

「博愛精神が非常に高い点」

「周りに気を遣い過ぎる点」

「これまで1人で決断してきた経験が少ない点」

「物事の処理能力が群を抜いて優れている点」

これらを指摘された。

素早く反応したのは母親だった。

「それはどちらかと言えば性格の問題ですよね? 脳については本当に異常がないのでしょうか?」

誠以上に必死になっている母親へ、佐島が優しく語りかけた。

医者

「お母さん、LGBTや性的マイノリティーという言葉はご存じですか?」

「存じ上げておりません」

「性に関する障害です。胎児期に脳の性分化に異常が生じた結果、起きると考えられています。誠くんの場合も、それと似たようなことが起きているのかもしれませんが、今のところハッキリとは分かりません」

「そうなんですね。やはり脳に関しては分からないと…」

「ただ、あらゆるイレギュラーやマイノリティでも人権が守られる流れが世界で起きています。確かに誠くんは、今のままでは社会生活が窮屈になるかもしれませんが、いずれは社会の方がその姿勢を問われる時代になるかもしれません」

ネットキャンバス

母親の物言いが少し強くなった。

「お言葉ですが、私はとても一夫多妻制が認められる時代が来るとは思いませんわ」

「もちろん社会がどうなるかは、私も何とも言えません。ただ安心して頂きたいのは、誠くんはとても優秀だということです。おそらく今の問題は、優秀過ぎるために可能になってしまう事象だと思うのです」

「それはつまり?」

「具体的には、誠くんの情報処理能力なら、複数の女性とも上手く対応できてしまうということです。逆を言えば、普通の人は、それが難しいために1人に絞っている側面もあるわけです」

2人の会話にしばしの静寂が訪れた。

「先生の斬新的な考え方には初めて触れますが…。でも結局、社会が今のままならトラブルも増えますし世間体もありますし…」

「心配なさらなくて大丈夫です。誠くんなら、何とかできると思います。今のままでも上手くこなせると思います。私はカウンセリングの中でそれを確信しています」

「そう、なんですか…」

母親のトーンが落ち着いてきたのを確認した佐島が、母親へ頭を下げた。

「それとすみません。ちょっとだけお母さんは退出して頂けますか? 誠くんと2人だけで話したいことがあるので…」

待合室

2人きりになったことで、佐島はようやく誠だけに話しかけた。

「さーて、どうしましょうか? 誠くんは、病気として診断名がついたほうが、気が楽になりますか? 例えば…『自分はこういう病気なのだから気にしても仕方ない』と肩の荷が下りますか?」

「えっと…それは」

「それとも『自分は断じて病気ではない。ただの個性なのだ!』と思いたいですか? 病気と言われると、自己肯定感が低下してしまいますか?」

「突然そんなことを言われても…」

「んー、どちらを選んでもいいんですよ」

ネットキャンバス

「いえいえ、そんな大事なことを、勝手に決めていいんですか?!」

佐島は、悪戯っぽく笑いながら誠のほうへ顔を突き出すと、小さく囁いた。

「それが医師という仕事の不思議なところでね…。ここだけの話…、私のさじ加減で、どうにでもなるんですよ」

それを聞いて誠は吹き出した。
真剣に悩んでいた自分が少しだけバカらしく思えた。

「先生、ありがとうございました。診断名はお任せします。僕は気にせず、僕なりにやれるところまでやってみます」

巻誠。中学生

吹っ切れた誠に怖いものはなかった。

難しいことを考えるのも止めた。

【自分の気持ちに正直に! そして自分も相手も同じだけ大切に!】

その決意だけを確認したのだった。

ここから「稀代のプレイボーイ、巻誠」が動き出す。

カッコイイ伝説は1つもない。

一部の男性からは羨ましがられるが、殆どの女性からは「最低!」「最低!」の嵐となる伝説なのだ。

ただ、それも仕方のないことだった。

この時代にポリアモリーという考え方は、まだ認知されていないのだ。

ポリアモリー ネットキャンバス


加えて、誠自身、ポリアモリーを実践していることに気付いていなかったのだから。

ただの女好きとは異なる「LOVE&PEACE」。

その巻誠の先鋭的な取り組みに、初めて気付けた人間は、1つ上の従姉、神楽坂美咲だった。

ただ…、
それも10年後の話となるのだ。

-fin-

矢祭麻衣子

あんた、大変な道を進んじゃっているのねー。多分、あと100年はかかるわよ

渡辺皇海

うーん、恋愛に疎い人間にとっては何が何やら…

富士サスケ

お、オゥ。俺は知っているぜ! ポールモーリアだろ?

神足悠香

だーめだコリャ…


2022年9月24日

最低男の中身


ネッキャンミーティング後の
出雲美紀と神楽坂美咲の会話より

ネッキャンミーティング 神楽坂美咲と出雲美紀

出雲美紀

恥ずかしながら最近知ったのですけど、美咲さんは誠さんと親戚だったのですねぇ

神楽坂美咲

恥ずかしながらそうなのよ。父の妹の子供で、私の一学年下ね。巻家は神楽坂の本家とは離れているから、誠はもう、小さい頃から自由奔放で…

出雲美紀

見ていて分かりますw 女子メンバーからは、最低!最低!の嵐ですものねぇ

神楽坂美咲

そうね、私もずっと最低だと思っていたけど。実はあいつ、高1の時、僕はクラスの女子全員とは付き合えない…って本気で落ち込んでいたのよ

出雲美紀

あはは、物理的に無理ですよねぇ

神楽坂美咲

あいつが言うには、物理的には可能でも、自分の心に壁がある、と。女子の顔や体形や性格の好みに左右されているようじゃ、僕の愛は偽善だ! 何で全員を平等に愛せないんだ!ってね

出雲美紀

あぁ、誠さんのアレって、本当はそういうことだったんですね

神楽坂美咲

基本アホなのは間違いないけど、単なる女好きとはちょっと違うのよねー

巻誠 ネットキャンバス
出雲美紀

皆が『最低だけど憎めない』と言っていたのが、ちょっと腑に落ちましたぁ

神楽坂美咲

ネッキャンに誘った私としては胃が痛いけど、もうしばらくすれば双方にいい影響を与える予感がしているのよ

出雲美紀

美咲さんがそう予想しているなら、大丈夫ですよ。あ、ちなみに大学8年生って、何か医療系の特殊な学校に行かれているんですか?

神楽坂美咲

まさか。幼稚園からエスカレーター式に上がった普通の大学よ。留年と休学を繰り返して8年。モラトリアムの期間が長すぎるわよね

出雲美紀

人それぞれですから、私は別にいいと思います。ところで三笠さんも美咲さんが誘ったんですかぁ?

神楽坂美咲

あー頭痛い。それは断じてないんだけど、その話はまた今度にしてください…

-f i n-

伊藤明日香

んー…

佐々木拓海

と、とにかく皆さん仲良くいきましょうね!


2022年12月5日

mmと矢祭麻衣子(1)


ネッキャンミーティング後。
巻誠は、矢祭麻衣子を途中まで送っていた。

ネットキャンバス
巻誠

ねぇ麻衣子ちゃん、僕の長所っていくつ挙げられます?

矢祭麻衣子

冗談抜きで一つも思い浮かばないわ。短所なら山ほどあるけど…

巻誠

よしよしw。これぞ僕の心がけですねー。長所って周りから嫉妬されますけど、かわいい短所なら、逆に愛されるんですよー。ふふふw

矢祭麻衣子

何か腹たつけど…、嫌いにならないのは、やっぱり愛されキャラなのかなー

巻誠

よしよしよしw

矢祭麻衣子

確かに、あんたに1か月前からかけてる呪いも全然効いてないしねー

巻誠

へっ?

矢祭麻衣子

-f i n-

隼賢介

今度、私にもその祝い、お願いしていいですか?

長谷川光

出たーっ!天然!


2023年1月8日

mmと矢祭麻衣子(2)


矢祭麻衣子がネッキャンミーティングに向かう途中、Bサインに近いコンビニ内で巻誠を発見した。

おそらく誠は皆への差し入れとして肉まん買おうとしているのだろう。

店員に「1つ残して全部ください」と告げていた。

ネットキャンバス

コンビニから2人で出た時に麻衣子が尋ねた。

「さっきの肉まんのことだけど、男らしく全部買えば良かったんじゃない? 私肉まん大好きだし…」

「あぁ聞こえてました?」

誠が笑いながら答えた。

「後ろにお客さんが並んでいなければそうしましたよ。でも昔、彼女の好きな肉まん買おうとレジ列んでたら、1つ前にいたお客さんが「あとこれ全部下さい」って言った経験があって…」

「買えなかったのね?」

「はい」

誠が少し遠い目をした。

巻誠

「あの時の彼女と味わった切なさが、全部買うことにブレーキをかけさせるんですよねぇ…」

「MMも色々あるのね。ちなみに今回後ろに並んでたのは私なんだけど!」

「へっ?」

-fin-

渡辺皇海

あの矢祭さんと普通に交流できるのが凄いです…

神足悠香

確かに2人は仲いいですよねー


2023年1月25日

mmと矢祭麻衣子(3)


巻誠

昨日のニュースで、オーストラリアの海岸で人食いサメが出たと…

矢祭麻衣子

私、泳ぎは得意だけど、さすがにサメからは逃げきれないわね

巻誠

大丈夫ですよ。いざという時は、僕が何とかしますから!

矢祭麻衣子

気にしなくていいわよ。私があなたより早く泳げばいいだけだから

巻誠

へっ!?

-fin-

津雲大輔

こいつは本当に恐ろしい女だ…

神楽坂美咲

誠、骨は拾ってあげるわね…


巻誠の秘密

2005年3月21日

小学6年生。
まだバリバリの童貞だった頃の巻誠。

巻誠

相変わらずたくさんの女子に囲まれていたが、その中に1人だけ特別な想いを持つコがいた。

諸菱由衣。

幼稚園で出会った誠の初恋の人であり、由衣もまた誠が初恋の相手だった。

異性の中では、由衣と過ごした時間が最も長く、色々な話もたくさんした。

現在まで、いや、おそらく死ぬまで続く誠の「女性の原型イメージ」は、由衣そのものなのだ。

ただし、
由衣は小学2年生の時に、誠に強く抗議したことがある。

「私以外の女の子とおしゃべりしないで!」と。

それは少女ならではの嫉妬心だった。

多くの人は共感できると思う。

しかし誠には、昔から嫉妬の感情が欠落していた。

例えば、由衣が他の男の子と楽しそうに遊んでいるのを眺めるのも、また好きなのだった。

だからこそ誠は、その後も由衣の気持ちに寄り添えずにいた。

誠は由衣から何度か交際を申し込まれていたのだが、「由衣だけを大切にする」条件であったため、ずっと首を縦に振れずにいたのだった。

誠と由衣のいる学校は、幼稚園から大学まで続くエスカレーター式だった。

そして誠は、由衣の告白から4年後となる卒業式当日に、衝撃の言葉を受け取るのだった。

「由衣ちゃん、中学でも同じクラスになれるといいね♪」

「誠くん、それは無理よ。私、別の学校に行くから」

誠は驚愕のあまり声が出なかった。

「私、今度は女子中に行くの。ちょっと男子とは距離を置こうと思って」

「そんな…。僕とは?」

「もう会うことはないと思う。この先、ずーっと誠くんのそばにいながら自分のものにならない生き地獄から逃れるための転校だもん」

「由衣ちゃん…嫌だ…嫌です!」

「もう決まったことだから。今日でお別れよ。誠くんも元気でね」

由衣の意思は固く、その後、由衣と会うことは一度もできなかった。

電話をしても家を訪ねても、由衣は誠を拒絶し続けた。

誠の人生史上、最大の挫折。

もちろん由衣や周囲が悪いわけではない。

原因は全て誠自身にあるのだ。

誠は結婚については、小学生の時点で諦めていた。

母親から説明された「一夫一妻制のシステム」に自分は順応できないと。

巻誠と母親

それでも結婚さえしなければ…、「彼氏彼女」という関係さえ作らなければ…、「皆と仲良く平和に過ごせる希望」を持っていた。

しかしそれも幻想であったことを突き付けられたのだ。

このやり方であっても、大切な人は去ってしまうのだと…。

由衣との別れはしばらく尾を引いた。

誠の笑う回数は極端に減り、自分を責める時間が増えた。

悩んでも考えても答えが出ず、心療内科に通うようになった。

そんな苦しい誠の心の支えになったのが5人の女友達で、皮肉なことにその5人の存在が誠の心をさらに苦しめるのだった。

巻誠

半年後、担当医「佐島健」の協力によって、ある答えを得ることができた。

「自分の気持ちに正直に、相手の気持ちに誠実に」だ。

吹っ切れた誠が真っ先に向かった先は、1つ上の学年で、親戚でもある神楽坂美咲だった。

「ねぇ、みーちゃんに彼氏っている?」

「いないわ。時間と労力的に無理だし、合理的に考えて作る必要がないから」

「僕もこれまではいなかったんだ…」

「そうなの? 意外! 誠の王子さまっぷりは中等部でも有名なのに…」

「うん。僕は恐れていたんだね。でももう大丈夫。これからはどんどん彼女を作っていくから!」

「どこが大丈夫? それ間違っているからね!」

神楽坂美咲

「分かっている。まさにその間違いを恐れていたんだから」

「ふーん。誠、ちょっと雰囲気が変わったかも…」

「ただ…僕が好き勝手にやると、みーちゃんに迷惑かけちゃうなぁーって」

「笑わせないで…」

美咲が少しだけ優しい目をした。

「今更よw 誠が生まれてきてからずーっと迷惑のかけられっぱなしだから!」

「じゃあ…」

「うん。好きにやってみたら? 尻拭いはやってあげるわよ」

「ありがとう! みーちゃん大好き!」

巻誠。中学生(ネットキャンバス)

翌日。

障壁が取り除かれた誠は、有希、陽菜、莉央、綾、悠香を前に切り出した。

「全員、僕の彼女になって下さい!」

5人の沈黙は10秒ほど続いただろうか。

最初に口を開いたのは有希だった。

「ちょっと理解に苦しむけど、まず、由衣とは別れたの?」

誠は俯きながら答えた。

「由衣ちゃんとは、初めからそんな関係じゃなかったんだ」

全員が驚いた表情を見せた。

「皆、由衣と付き合っていると思っていたから距離を取っていたんだけど…」

そこからは矢継ぎ早の質問だ。

「彼女になるチャンスだけど、全員と付き合うってどういうこと?」と陽菜。

「誠くん、付き合うって意味分かっている?」と莉央。

「私達のこと、軽く考えてない?」と綾。

誠は低い声を出した。

「ゴメン。僕はもうナァナァでいたくないんだ。しっかり約束事を決めて、真剣に1人1人と向き合いたいんだ」

「違う違う! 恋人っていうのは1人だけ!ね」

「ほんとにゴメン。そこだけは無理なんだ。全員を大切にするから、お願いします!」

巻誠

再び5人に沈黙が訪れた。

最初に破ったのは、悠香だった。

「多分、誰もOKしないと思うけど、それでもいいの? この中の1人を選べばいいだけの話じゃない」

「僕が間違っているのもバカなことを言っているのも分かっている。でも有希、陽菜、莉央、綾、悠香、の中から1人だけ選ぶことは絶対にできない。そしてこのまま何となく一緒にいて、突然、誰かが僕の前から離れていってしまうことも耐えられないんだ!」

陽菜が呆れたような声を出した。

「誠くん、チョー自分勝手なこと言ってるの分かってる?」

「うん。だから皆も真剣に考えてほしい。僕は彼女を全力で大切にする。でも僕を彼氏に選ぶかは皆の意思だから、僕はお願いすることしかできない…」

有希から出たのは、どちらかと言えば、憐みの声だった。

「誠くんのワガママって初めて聞いたから可哀そうに思うけど、やっぱりそれは無理よ。浮気公認の彼女になって下さいって…」

「分かってもらえないと思うけど、浮気じゃないんだ。全員に対して本気なんだ」

巻誠

膠着した流れを変えたのは、莉央だった。

「私は何となく分かるわよ。誠くんより誠実な男子を見たことないし、これまでも皆に分け隔てなく優しくしてきてくれたじゃない」

綾がピシャリと言い切った。

「いずれにせよ今日は解散よ。すぐに出せる結論じゃないし」

「そうね。私も頭痛いし、まずは1人になりたいわ」

有希の言葉に皆は頷き、会はここでお開きになった。

そして、この6人が再び揃うことは2度となかった。

1か月後。

誠の周りには相変わらず多くの女子が集まるのだが、正式な彼女と位置付けられたのは、森川莉央、矢島陽菜、東村柚希の3人だった。

莉央と陽菜は、5人の女友達メンバーだったが、東村柚希には驚かされた。

クラスでも一番交流が薄い女子だったからだ。

柚希は、常に影が薄かった。

いじめられていたわけではないが、友達がおらず、いつも1人で教室の隅に佇んでいた。

極論を言えば、ユキに話しかけるのは誠くらいだった。

「おはよう」

「今日の美術、2B教室に変更だってよ」

「お疲れさま。マット運動がんばっていたね」

「じゃーねー。気を付けて帰ってね」

そんな柚希が、初めて自分から誠に話しかけた言葉。

それが「私を巻くんの彼女にして下さい…」だった。

誠の返事に迷いはなかった。

「大歓迎だけど、ちょっとややこしいルールがあるんで、それで良かったら…」

柚希にとって「復数彼女、複数彼氏の条件」は、大きな障害にならなかった。

「誠と付き合える!」

その喜びに勝るものは存在しなかった。

森川莉央は、5人の女友達の中では一番男子の扱いになれていた。

年の近い兄と弟に挟まれているだけあって、男子の「笑うツボ」も「バカさ加減」も理解していたのだった。

莉央が最終結論として誠に告げたのは「おもしろそうだから付き合ってみる!」だった。

ただし「お試しだから、無理だと思ったらすぐに別れるよ」とも。

矢島陽菜は、長時間に渡る誠との話し合いの中で、ずっと泣いていた。

確かに誠と付き合うメリットとデメリットを天秤にかければ、苦悩するのも当然だろう。

最終的に、決断した陽菜は誠に懇願した。

「私のこと、彼女だとは周りに言わないで。これまで通りお友達で通して…。そうじゃないと…私が惨めすぎるもの…」

「そうか。周りから好奇の目で見られないようにだね。でも僕の中で陽菜は大切な彼女だから何でも言って!」

「ありがとう。ちよっと変な形になってるけど、初めて付き合う人が誠で良かった…」

そう言うと初めて笑顔を見せたのだった。

人を含めた全ての生物は、異端なものを集団から取り除こうとする習性を持つ。

それは誠に関しても例外ではなかった。

中学では2度、高校では1度、異端な誠を仲間外れにしたりいじめようというムーブが起きたことがある。

だが、全ては途中で瓦解した。

理由は2つある。

まずは神楽坂美咲の存在だった。

あの厳しい美咲が黙認しているということは、何か特別な意味が隠されているのだろうと周りを冷静にさせたのだ。

そして誠自身の人を引き寄せる力が強かったからだ。

誠との時間を共有すれば誰でも分かる。

誠を遠ざけるより、一緒にいるほうが、遥かにメリットは大きいと。

モノでも権利でも名声でも、誠は誰にでも分け隔てなく譲ってくれた。

何より誠と一緒にいれば、その優しい言動に心が癒されるのだった。

巻誠

誠の彼女数。

中学スタート時では3人だったが、年齢を重ねるにつれ少しづつ増えていった。

「お互い複数のパートナーを持つことを認める」

この誠の申し出に、OKを出す人間が本当にいるのか疑問に思う人もいるだろう。

ただ、そこは完全に個人差の領域となる。

OKを出す理由も、まさに千差万別だった。

涼音
「私は、誠を失うくらいなら、この状況に耐えられるわ」

麻凛
「初恋が誠さんなので、恋愛も付き合い方もよく分かっていませんが、私は誠さんのことを信じているので大丈夫です」

優紀
「あぁ、私も他の男と遊ぶから気にしないで!」

真菜
「私はレイプされた過去があり、自分が汚れているとずっと悩んでいました。そこへ誠が『不幸で悲しくて悔しくて怖かったね。でも僕は真菜ちゃんの命さえあったならいいんだよ。さぁ僕のところにおいで…』との言葉で救われたんです」


「私は誠を愛しています。愛しているからこそ誠の愛している人も受け入れられると信じています」

沙羅
「私はこれまで散々、彼氏に浮気されてきた女なの。嘘をつかれるより、この潔い形のほうが安心できるわw」

菜子
「私は自己成長のために男と付き合うの。誠とは絶対に結婚したくないけど、もっと一緒にいて学びたいのよ」

英子
「私は別に誠じゃなくてもよかった。伝統的な一夫一婦制に対する疑念があるだけだから。皆それを盲目的に信じているから、私は逆に挑戦したいのよ」

確かに変わった理由ばかりだが、誠の周りにたくさんの女性がいる事実は否定できない。

ただし…

モテているわけではない。

周りは勘違いしているが、断じてモテてはいない。

実際には、9割以上の女性が誠の提案を拒絶している。

つまり巻誠という人間は、フラれまくっているのだ。

A子
お断りします。私を軽く見てるとしか思えないわ。

B子
交際って1人でも面倒なのに、複数が絡んでいるなんてムリ

C子
彼氏に他の女性がいるなんて、平気でいられるはずがないわ

そう。
これこそ通常の反応となる。

ライヤー

うんうん

また、いざ付き合い始めても、途中で別れを切り出されることもある。

D子
やっぱり無理!こんな形は耐えられない

E子
誠を嫌いになったわけじゃないけど…、ごめんなさい!

そう。誠は誰よりも別れを経験している。

どんな形であれ、別れは悲しいものだ。

高校までは、別れるたび、フラれる都度、悩んだり苦しんだり迷ったりした。

ただ、次第に自分のスタイルが固まってくると、割り切れるようにもなった。

加えて何度経験しても、諸菱由衣との別れ以上に辛いことは起きなかったのだ。

それは当時、由衣の新しい旅立ちを応援してあげられなかった後悔もあるせいだろう。

だからこそ今、別れ行く女性を笑顔で送り出せる。

彼女達の今後の幸せを、心から願えることこそが、自分の心をも救っているのだった。

巻誠のハーレム状態。

それを眺める男友達の反応は、概ねこうだった

2割は、羨ましがったり誠を師匠のようにあがめた。

3割は、女性と一緒になって誠を批判した。

残りの5割は、嫉妬と羨望と嫌悪と親和が入り混じる、複雑な態度をとった。

幼稚園から一緒の同級生からよく言われたのは、「お前、昔から気が多かったもんなぁ」

大学から入ってきた人間は、「巻って、凄い恋愛体質なんだね」

ただし、これらの言葉は地味に誠の心を傷つけていた。

誠がやっていることは、「気が多い」とか「恋愛体質」で片付けられるほど軽くも楽でもない。

しかし、それに代わる単語が存在しないので説明しようがない。

当初は色々な答え方を試していたが、数を重ねる中で無難な答えに辿り着いた。

「まぁ、そう見られていることは自覚してるよw」

確かにこれで波風は立たない。

永遠に理解されることもなかったが…。

巻誠

「誠はいいなぁ。毎日、色んな女性とHができて!」

そう露骨に言ってくる仲間もいた。

もちろん誠は、フリーセックスを目的にしたことはない。

セックスは愛情表現の一形態でしかないため、実際、セックスのない付き合い方もあった。

ただ、そう言われて初めて気付いたこともある。

「確かに性欲が強い女性は僕を選ばないかもしれないなぁ。僕は物理的に応えられない可能性が高いから…」

巻誠の人生が大きく変わったのは、2016年8月14日。
アメリカにいる神楽坂美咲に呼ばれてからだった。

美咲はサンフランシスコ国際空港まで迎えに来てくれた。

誠は、美咲の後ろに続き、タクシーを降りると大きなビルに入った。

そしてよく分からないまま「プレジデントオフィス」と書かれた部屋に続けて入った。

その奥から聞こえてきたのは流暢な日本語だった。

「こんにちは。はじめまして!」

声の主は長谷川光。

長谷川光

美咲の上司だった。

誠は、安心して日本語を返すことができた。

「綺麗な方ですね。この後、お茶でもどうですか?」

「まことッ!ちょっと黙っていなさいっ」

美咲が早口でたしなめた。

「ワォ。ただのアメリカングリーティングでしょ? なんかみーちゃん、哲にぃと別れてからヒステリックに…」

「だから黙りなさい!」

2人のやり取りを見て、光は笑い出した。

「あははっ、親戚とは聞いていたけど、全く違うタイプのコなのね。今はちょっと忙しいからダメだけど、日本に帰ったらね」

美咲は軽く咳ばらいをしてから尋ねた。

「社長、それで先日お願いした件なのですが…」

「えぇ、話はついているわよ。ここに電話して日時を調整して下さい」

そう。
いよいよここからが、渡米の目的となるのだった。

翌日、誠が向かったのは、ポリアモリーグループ」の代表を務めるスミスの自宅だった。

誠も初めて聞く「ポリアモリー」

簡単に言えば、複数のパートナーと親密な関係を築くことで、誠がやってきたことと驚くほど似ていた。

ただ、スミスが渡してくれたマニュアル本を見て誠は驚いた。
そこには明確で詳細なルールがあった。

相手との関係において、透明性と正直さと誠意を持つこと。

合意とコンセンサスを大切にし、強制や無理な同意は避けること。

嫉妬や不安といったネガティブ感情を認識したら、健全に対処できるよう話し合うこと。

関係ごとの境界許容範囲を明確に設定すること。

複数のパートナーと関係を維持するために、時間とエネルギーの管理を徹底すること。

また、何人かグループメンバーとも話をさせてもらったが、彼らは人間的にも社会的にも自分よりしっかりしていた。

フラフラして何の責任の取れない自分が、社会的に非難を受けるのも当然な気がした。

それでも参考になる点、学ぶべき点は大いにあり、誠は大きく勇気づけられた。

世界には自分と同じ人達がいたんだと。

そして自分がやってきた「それ」には、名前も付けられていたんだと。

「ポリアモリー」

ポリアモリー ネットキャンバス

この概念が世間にもっと浸透すれば、自分達は、もっと生きやすくなる。

今後、自分は周りに面倒な説明をしなくてもよくなるのかもしれない。

例えば、友人から女性の多さを指摘された時…


「あぁ、僕はポリアモリーだから…」

友人
「なるほど、理解しました」

これだけで済むようになったなら、どれだけ幸せだろう!?

仮に有名人になったとしても、マスコミを恐れることが無くなるのだ。

記者から女性の多さを指摘された時…

記者
「巻さん、複数の女性と付き合っているそうですね? 謝罪会見を開いてください!」


「はい。僕らはポリアモリーの関係なのです(ドヤッ)」

キャッハーッ! これだけで終わるのだ。

あぁ、ポリアモリー、なんて素晴らしい響きだろう。

誠は帰国便の中でそっと目を閉じた。

本当に久しぶりだ。

何年ぶりかに、体の芯から熟睡できそうな気がした。

-fin-

富士サスケ

なぜmmが刺されないのか? その秘密が分かったぜ

佐々木拓海

とてもマネできる話ではなかったですね

伊藤明日香

ポリアモリーが市民権を得るのは難しいでしょうが、少しでも巻さんの誤解が解けるといいですね


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