巻誠
shape of heart
(2022年時点)
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巻誠さんのエピソード集です(読みたいタイトルをクリックしてください)
最低評価からのスタート
登場人物
巻誠
(幼少期)
「LOVE&PEACE」
これが巻誠を表すのに最適な言葉となる。
誠は、小さい頃から「愛と平和」を実践する優しい子だった。
あまりに優しく、戦うことを嫌ったため、KAGURAZAKA商事の後継者争いからは、真っ先に脱落したほどだった。
誠が幼稚園の年長クラスの時だった。
母親が、深い意味もなく尋ねた。
「幼稚園で好きな女の子はいるの?」
「うん!春ちゃん好き、なっちゃん好き、サトちゃんも好きだしユイちゃんも好き!」
「あらら、好きなコだらけね。苦手なコはいないの?」
「うーん、しいちゃんはちょっといじわるするから苦手だけど、嫌いじゃないよ」
「それは楽しそうで何よりだわ。このまま皆と仲良くなさいね」
「うん!」
そう…。母親の言う通り、皆と仲良く生きられれば、どれほど幸せだっただろうか。
誠が小学2年生になったある日、衝撃は突然訪れた。
クラスメイトの諸菱由衣から「香菜とはもう話をしないで。私とだけ喋って」と言われたのだった。
最初は冗談かと思い、軽く対応していたが、泣き出してしまった由衣を見て誠は考え込んだ。
あれほど優しい由衣が言うセリフとは思えない。
一体、何があったのだろう。
自分一人では埒が明かなかったので、帰宅後、母親に相談した。
「由衣ちゃんの言っている意味が分からないんだ」
「由衣ちゃんは誠と付き合いたかったのね。好きな人を独り占めしたい。それも自然な感情だと思うわ」
「付き合うって何?」
「1人のお相手と誠心誠意、向き合うことよ」
「1人…。皆を好きじゃいけないの?」
「まぁ付き合うくらいならば、他に好きな人がいてもいいかもしれないけど…。いざ結婚ってなったらそうはいかないわよ。1人に絞らないと」
「バイキングなら1種類しか食べちゃいけないってこと? 結婚ってそういうお約束なの?」
「バイキングはどれをとっても誰にも迷惑かけないでしょ? 結婚してまで色々なコに手を出したら、周りがメチャクチャになっちゃうのよ」
「じゃあ誰にも迷惑かけず、周りもきちんとすれば大丈夫だよね?」
「いいえ。日本には、一夫一妻という法律で決められた制度があるからダメなの」
「そう…」
「あら、どうしたの誠? そんなに暗い顔をして」
「僕、結婚できないかも…。誰か1人だけを選ぶなんてできないよ…」
「うふふ、大丈夫よ、安心して。誠も大人になったら自然と変わるから」
2006年5月20日
誠は中学生になった。
相変わらず好きな女子はいるのだが、誰とも付き合うことはできなかった。
残念ながら母親の予測は外れ、誠の中身は何も変わらなかったためだ。
1人に絞れない。そして皆を同じくらい好き。
さすがに誠は、自分がおかしいのだと思った。
昔は、皆が複数のコを好きと言っていた。しかし未だにそんなことを言っているのは、自分一人なのだ。
自分が皆と違うのは、脳に異常があるためだと考えた。
あれほど相思相愛だった諸菱由衣も、今や自分の許を離れてしまったのだ。
母親に頼み込んで、色々な病院を訪ねた。
「いやー若いっていいねー」
殆どが一笑に付された。
中にはMRIで画像を取ってくれる先生もいたが、最終的には「異常なし」と結論付けられた。
誠は、絶望感からうつ状態になり、脳外科から心療内科へと診療科が変更された。
新しく担当になった医師、佐島健は、まだ若かったが非常に熱意のある先生だった。
誠の話も親身になってよく聞いてくれた。
そして今日は、これまでの心理テストとカウンセリングの結果が示される日だった。
「博愛精神が非常に高い点」
「周りに気を遣い過ぎる点」
「これまで1人で決断してきた経験が少ない点」
「物事の処理能力が群を抜いて優れている点」
これらを指摘された。
素早く反応したのは母親だった。
「それはどちらかと言えば性格の問題ですよね? 脳については本当に異常がないのでしょうか?」
誠以上に必死になっている母親へ、佐島が優しく語りかけた。
「お母さん、LGBTや性的マイノリティーという言葉はご存じですか?」
「存じ上げておりません」
「性に関する障害です。胎児期に脳の性分化に異常が生じた結果、起きると考えられています。誠くんの場合も、それと似たようなことが起きているのかもしれませんが、今のところハッキリとは分かりません」
「そうなんですね。やはり脳に関しては分からないと…」
「ただ、あらゆるイレギュラーやマイノリティでも人権が守られる流れが世界で起きています。確かに誠くんは、今のままでは社会生活が窮屈になるかもしれませんが、いずれは社会の方がその姿勢を問われる時代になるかもしれません」
母親の物言いが少し強くなった。
「お言葉ですが、私はとても一夫多妻制が認められる時代が来るとは思いませんわ」
「もちろん社会がどうなるかは、私も何とも言えません。ただ安心して頂きたいのは、誠くんはとても優秀だということです。おそらく今の問題は、優秀過ぎるために可能になってしまう事象だと思うのです」
「それはつまり?」
「具体的には、誠くんの情報処理能力なら、複数の女性とも上手く対応できてしまうということです。逆を言えば、普通の人は、それが難しいために1人に絞っている側面もあるわけです」
2人の会話にしばしの静寂が訪れた。
「先生の斬新的な考え方には初めて触れますが…。でも結局、社会が今のままならトラブルも増えますし世間体もありますし…」
「心配なさらなくて大丈夫です。誠くんなら、何とかできると思います。今のままでも上手くこなせると思います。私はカウンセリングの中でそれを確信しています」
「そう、なんですか…」
母親のトーンが落ち着いてきたのを確認した佐島が、母親へ頭を下げた。
「それとすみません。ちょっとだけお母さんは退出して頂けますか? 誠くんと2人だけで話したいことがあるので…」
2人きりになったことで、佐島はようやく誠だけに話しかけた。
「さーて、どうしましょうか? 誠くんは、病気として診断名がついたほうが、気が楽になりますか? 例えば…『自分はこういう病気なのだから気にしても仕方ない』と肩の荷が下りますか?」
「えっと…それは」
「それとも『自分は断じて病気ではない。ただの個性なのだ!』と思いたいですか? 病気と言われると、自己肯定感が低下してしまいますか?」
「突然そんなことを言われても…」
「んー、どちらを選んでもいいんですよ」
「いえいえ、そんな大事なことを、勝手に決めていいんですか?!」
佐島は、悪戯っぽく笑いながら誠のほうへ顔を突き出すと、小さく囁いた。
「それが医師という仕事の不思議なところでね…。ここだけの話…、私のさじ加減で、どうにでもなるんですよ」
それを聞いて誠は吹き出した。
真剣に悩んでいた自分が少しだけバカらしく思えた。
「先生、ありがとうございました。診断名はお任せします。僕は気にせず、僕なりにやれるところまでやってみます」
吹っ切れた誠に怖いものはなかった。
難しいことを考えるのも止めた。
【自分の気持ちに正直に! そして自分も相手も同じだけ大切に!】
その決意だけを確認したのだった。
ここから「稀代のプレイボーイ、巻誠」が動き出す。
カッコイイ伝説は1つもない。
一部の男性からは羨ましがられるが、殆どの女性からは「最低!」「最低!」の嵐となる伝説なのだ。
ただ、それも仕方のないことだった。
この時代にポリアモリーという考え方は、まだ認知されていなかった。
加えて、誠自身、ポリアモリーを実践していることに気付いていなかったのだから。
ただの女好きとは異なる「LOVE&PEACE」。
その巻誠の先鋭的な取り組みに、初めて気付けた人間は、1つ上の従姉、神楽坂美咲だった。
ただ…、
それも10年後の話となるのだ。
-fin-
あんた、大変な道を進んじゃっているのねー。多分、あと100年はかかるわよ
うーん、恋愛に疎い人間にとっては何が何やら…
お、オゥ。俺は知っているぜ! ポールモーリアだろ?
だーめだコリャ…
巻誠という最低男
ネッキャンミーティング後の
出雲美紀と神楽坂美咲の会話より
恥ずかしながら最近知ったのですけど、美咲さんは誠さんと親戚だったのですねぇ
恥ずかしながらそうなのよ。父の妹の長男で、私の一学年下ね。巻家は神楽坂の本家とは離れているから、誠はもう、小さい頃から自由奔放で…
見ていて分かりますw 女子メンバーからは、最低!最低!の嵐ですものねぇ
そうね、私もずっと最低だと思っていたけど。実はあいつ、高1の時、僕はクラスの女子全員とは付き合えない…って本気で落ち込んでいたのよ
あはは、物理的に無理ですよねぇ
あいつが言うには、物理的には可能でも、自分の心に壁がある、と。女子の顔や体形や性格の好みに左右されているようじゃ、僕の愛は偽善だ! 何で全員を平等に愛せないんだ!ってね
あぁ、誠さんのアレって、本当はそういうことだったんですね
基本アホなのは間違いないけど、単なる女好きとはちょっと違うのよねー
皆が『最低だけど憎めない』と言っていたのが、ちょっと腑に落ちましたぁ
ネッキャンに誘った私としては胃が痛いけど、もうしばらくすれば双方にいい影響を与える予感がしているのよ
…
美咲さんがそう予想しているなら、大丈夫ですよ。あ、ちなみに大学8年生って、何か医療系の特殊な学校に行かれているんですか?
まさか。幼稚園からエスカレーター式に上がった普通の大学よ。留年と休学を繰り返して8年。モラトリアムの期間が長すぎるわよね
人それぞれですから、私は別にいいと思います。ところで三笠さんも美咲さんが誘ったんですかぁ?
あー頭痛い。それは断じてないんだけど、その話はまた今度にしてください…
-f i n-
んー…
と、とにかく皆さん仲良くいきましょうね!
mmと矢祭麻衣子
ネッキャンミーティング後。
巻誠は、矢祭麻衣子を途中まで送っていた。
ねぇ麻衣子ちゃん、僕の長所っていくつ挙げられます?
冗談抜きで一つも思い浮かばないわ。短所なら山ほどあるけど…
よしよしw。これぞ僕の心がけですねー。長所って周りから嫉妬されますけど、かわいい短所なら、逆に愛されるんですよー。ふふふw
何か腹たつけど…、嫌いにならないのは、やっぱり愛されキャラなのかなー
よしよしよしw
確かに、あんたに1か月前からかけてる呪いも全然効いてないしねー
へっ?
-f i n-
今度、私にもその祝い、お願いしていいですか?
出たーっ!天然!
mmと矢祭麻衣子(2)
矢祭麻衣子がネッキャンミーティングに向かう途中、Bサインに近いコンビニ内で巻誠を発見した。
おそらく誠は皆への差し入れとして肉まん買おうとしているのだろう。
店員に「1つ残して全部ください」と告げていた。
コンビニから2人で出た時に麻衣子が尋ねた。
「さっきの肉まんのことだけど、男らしく全部買えば良かったんじゃない? 私肉まん大好きだし…」
「あぁ聞こえてました?」
誠が笑いながら答えた。
「後ろにお客さんが並んでいなければそうしましたよ。でも昔、彼女の好きな肉まん買おうとレジ列んでたら、1つ前にいたお客さんが「あとこれ全部下さい」って言った経験があって…」
「買えなかったのね?」
「はい」
誠が少し遠い目をした。
「あの時の彼女と味わった切なさが、今も全部買うことにブレーキをかけさせるんですよねぇ…」
「MMも色々あるのね。ちなみに今回後ろに並んでたのは私だけど!」
「へっ?」
-fin-
あの矢祭さんと普通に交流できるのが凄いです…
確かに2人は仲いいですよねー
mmと矢祭麻衣子(3)
昨日のニュースで、オーストラリアの海岸で人食いサメが出たと…
私、泳ぎは好きだけど、さすがにサメからは逃げきれないわね
大丈夫ですよ。いざという時は、僕が何とかしますから!
気にしなくていいわよ。私があなたより早く泳げばいいだけだから
へっ!?
-fin-
こいつは本当に恐ろしい女だ…
誠、骨は拾ってあげるわね…